夏の雨 前編 1/3
赤信号で止まった時、湿った匂いが漂った。
午前中のうだるような暑さに、夜は冷製パスタかなと思い冷蔵庫を漁ると、でてきたのは萎びたトマト一つ。
天気予報では、夕方から降るように言っていたけれど、そんなに時間も掛からないだろうと思い、合羽を持たずに家を出た。
途中、思いつきで生のバジルが欲しくなり、町はずれのホームセンターまで原付を走らせると、店を出る頃には時計は夕刻を指していた。
信号が青に変わった。
私は原付のアクセルを一気に回した。
空では黒い雲が勢力を伸ばしつつあった。